12人の怒れる男

メモ。見たのは映画版。白黒。

延々12人が事件について話し、検証する。回想シーンなど一切なく、言ってみれば舞台のような雰囲気に感じる。

アクションも何もないのだが、刺激にあふれていて良かった。

言葉にしづらいのだが、現代的なシナリオ構成ではない気がした。特にアニメなどは基本的な登場人物が紹介され、展開し物語は膨らみ、途中でキャラの入退場があり、クライマックスがある。

この映画にはそういう整理された「起承転結」があまりない。どちらかと言えば小さな起承転結の蓄積があり、徐々に一報に触れた針がもう片方に押し込まれる物語だと思った。言い換えると、Aボタンを連打してゲージを満タンにするゲームのようである。

物語の中心となる白いスーツの男(陪審員8番)の行動がまず常に面白い。適当に見るとヒーロー気取りに見えるが違う。ただ「私は分からない」と言う。場の空気でなく人を裁く論理の重さを伝えているように見える。「疑わしきは罰せず」というものに近いがちょっと違うかもしれない。疑問が晴れない状態で「12人が有罪と言えば、人が死ぬのだぞ」という事実に対して、ただ真摯に向き合っている。殺人現場周辺の調査をしていたことが分かるのは彼だけだった。

ただそれでも、白スーツの主張は曖昧で理解に苦しむ人(視聴者)はいるのだと思った。基本的には「かもしれない」としか言わないからだ。主張がダルいのでヒーローとしてはよろしくない。悪は滅びろ、というものではなく「俺はわからねーんだ」という態度で臨んでいる。

他の11人が「疑わしきは罰する」スタイルで暗黙のうちに振舞っていたことについて白スーツは問題にしているのだと思う。事実上、人を殺す判断を下そうているときに判決には、当然判断に確信がなければならない。白スーツは「どっちとも言えないのに良く『殺しまーす』的に言えるよなぁ」みたいな視線で他の11人を見る。もし自分が(国と制度が違うとはいえ)陪審員になったとして、この目で射られて平静を保てるだろうかと考えていくと、白スーツの動きのみならず、判断を翻す一人ひとりの動きも面白くなってくる。

この物語では登場人物の名前や出自が余り整理されて出て来ない。わざとなのだろうし、現代的なテンプレートがない時代の良さが感じられた。

雑談の中にひっそりとその人の動きを決定づける何かが出てくる。例えばスラム出身の男性がスラム出身である旨を告白するシーンは実は伏線なのだと後に分かるが、告白の瞬間にそれと分かることはない。そもそもWikipediaの記事の通り、ほとんどの登場人物では名前が出て来ず、一度見た際には陪審員何番かもイマイチ判然としない (一度だけ番号順に並ぶのだが、意識することはないし以降名前が影響を受けることはほとんどない)。

物語の最後の終わり方のあっさりさも陪審員制度「的」に見えた。本当にあっさり退場していくのだ。主人公のように見える白スーツについて、自分は最後までその人の普段の素性がわからないまま物語が終わってしまった。それが分かるのが最後のシーンだ。「あ、そうかこんなにエキサイティングなのに、こいつらのこと何もしらねーや(´・ω・`)」と思ったところで

the end

と出てきた。まじでー。

なにか明確なボスがいるわけでもなく、ヒロインがいるわけでもなく、当時の様子が分かるように暑苦しく扇風機が廻らない暑苦しさが伝わってくる。複雑だが面白さがある。ストーリーなどなく、物語の背後に特定の商標や、追加課金を恐れる必要がない。続編の期待もない。

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