サウルの息子
カメラが登場人物に非常に近く、終始全景が見えない。緊迫感というか圧迫感があるのだが、逆に言うと「何がおこっているか」が分からない。あらすじは理解しとくべきだったかもしんない。 終始解放感に類するものがない(しいて言えば最後にサウルが笑顔を見せる瞬間くらい)。見て楽しいという映画というものではないと思うが(そりゃそうだ)、「戦場のピアニスト」と同様で観た後に各所のシーンで「じわじわ」来る感があり、いわゆる「考えさせられる」感じはする。 ただ、言葉に出来るのかというとそれが難しく、「うーん……?うーん」と言うしかないみたいな、確かに考えてはいるのだけど説明に適した語彙が自分の頭にないため、思考停止に非常に近い「考えされられる」になる。ある意味面白い現象でもあり、逆に話してなんぼみたいな状況下だとこの映画は説明しづらい。この点、 この手の戦争映画は技巧の重ね合わせみたいのがあるんかなと。つまりもう少し古いものから順に見ていかないとついていけないかもしれない。あるいはそれらしいというだけで、そこには何もないかもしれない。 「ここは生者の場所」という主張とサウルの埋葬の対比について、自分の中で100%納得が出来ていない。サウルは良心だったんだろうか。この点で面白いと思ったのは、この作品はサウルが何を考えているか、作中でサウルはほとんど説明していないことだ。 それにしてもそもそも、前提になっている舞台そのものにいて自分がこのレベルの正気を保てる気がしない。まずその部分について乗り越えずにこの手の話を解釈出来るものなんだろか。